古代オリエント博物館連携講座
古代メソポタミア文学の最高傑作といわれる『ギルガメシュ叙事詩』を原文のアッカド語と講師による注付きの翻訳で読んでいきます。
『ギルガメシュ叙事詩』は、紀元前1800年ころ、シュメルの都市国家の王ギルガメシュをめぐるそれまでの諸伝説を取捨選択して、一続きの物語として編まれた作品です。アッカド語楔形文字を用いて粘土書板に刻まれました。紀元前一千年紀のアッシリア版では、12の書板から構成され、全3600行ほどの長さでした。もっとも新しい写本はヘレニズム時代(紀元前4〜3世紀)の粘土書板ですから、1500年以上もの間、読み継がれ、書き写されたことになります。古代オリエントのベストセラーでであり、旧約聖書をはじめ、後代の文学への影響も見逃せません。
今から3800年ほど前に成立した物語ですが、私たち人間が抱える基本的な問題は今も昔も変わりません。むしろ、古代の文学には現代人が抱く問題が素朴に書き表されているといえましょう。今学期は、2024年度の古代オリエント博物館自由学校に引き続き、第9書板から第10書板までを読み進めます。そこには、最愛の友エンキドゥを亡くし、死の恐怖にとりつかれたギルガメシュが「生命の秘密」を求めて、太古の洪水を生き延び、神々に列せられた人物のもとに旅する模様が描かれています。
本講座は、講師がアッカド語を読んで翻訳し、文法事項などを説明するとともに、関連する図像資料などを紹介しながら、進めてゆきます。受講者はアッカド語の初級文法を習得していることが望ましいですが、初心者でも楽しんでいただけると思います。なお、受講者には、事前に、アッカド語原典と講師による注付きの翻訳をコピーでお届けします。
参考書など。月本昭男『ギルガメシュ叙事詩』(岩波書店、1996年)は絶版ですし、一部はすでに時代遅れです。1965年の邦訳に基づく矢島文夫『ギルガメシュ叙事詩』(ちくま学芸文庫)はお勧めできません。英訳であれば、A. George, The Epic of Gilgamesh, Penguin Classics, 2020がお勧めです。
アッカド語文法書には、R. Caplice, Introduction to Akkadian, Biblical Institute Press、1988;青島忠一郎『アッカド語』(リトン、2025年)などがあります。
※こちらは古代オリエント博物館連携講座です。
古代オリエント博物館友の会会員の方は特別料金でご受講いただけます。
友の会会員の方は、まずお電話でご予約ください。
電話番号 03-5949-5488