『源氏物語』を読んだことのない方でも、登場人物を中心に読むことでいつのまにか
物語の世界に浸っていることに気づくでしょう。
源氏物語の女性たち
― その「生き方」についてを考える ―
紫式部と言えば『源氏物語』ですが、作者紫式部は『源氏物語』の中に数多くの女性を登場させ、主人公光源氏を中心に彼女たちが織りなす人間模様を通して現代にも通じる何かを訴えています。この講座では、紫の上、明石の君、六条御息所、藤壺宮、朧月夜、女三の宮など、主な女君を順次取り上げ、これらの女性たちが主人公光源氏の女君として「どのように生きたか」を解明していきます。
紫の上、明石の君についてはすでにとりあげましたが、特に、紫の上については、源氏に幼い頃に引き取られて以来、その生涯を「源氏最愛の人」といわれますが、例えば、彼女を形容する「おいらか」(現代語の「おおらか」と同じ)という語ひとつ取っても、源氏の妻としてさまざまな体験をするうちに、その語がいろいろな意味を持つようになり、紫の上はほんとうに「幸い人」であったのか、考えてきました。
そして、明石の君については、ご存じの通り源氏が都を遠く離れた須磨・明石の地で出会った女性ですが、源氏との間に姫君まで設けたものの、その姫君を幼くして源氏に手渡すなど辛い生涯を生きた女性です。言ってみれば常に自分の身分をわきまえ、「身のほど」意識に生きた明石の君ですが、そうした明石の君の人生は何を意味していたのか考えてきました。
さて、10月期からは、『物語』中、唯一《物の怪》になった女性、六条御息所を取り上げます。六条御息所は、生きている時は生霊として「葵の上」に、死んだのちは死霊として「紫の上」や「女三宮」に祟ります。いわば源氏の「妻」たちに祟るのですが、それは同時に、御息所が源氏の生涯をとおして《物の怪》としてあり続けたとも言えます。源氏は「薄雲」巻で、自分の女性遍歴を振り返って「つひに心も解けず、結ぼほれて止みぬること二つなむはべる」(生涯の咎めとして心の晴れぬままに残ってしまったことがふたつある)と言っていますが、むろんその二つのうちの一つは六条御息所とのことでした。源氏をしてここまで言わせた女性、六条御息所とはどのような女性だったのでしょうか。作者紫式部は、一体、このような人物造型をとおして何を伝えたかったのでしょうか。《物の怪》とは何か。当時の人々の捉え方と紫式部の認識についても考えたいと思います。
【講座の進め方】
六条御息所の登場する巻々の中から必要な原文を現代語訳つきで読んでいきます。その際、「物の怪」など主要な語や語句については説明プリントを使いながらていねいに読み解いていきます。
【テキスト・資料】
上記「現代語訳付きの原文」、「語や語句の解説プリント」はこちらで用意します。
[村井先生の特別講座のご案内]
知られざる紫式部の生涯10/7・11/4・12/2
<https://cul.7cn.co.jp/programs/program_1003282.html>